患者さまの希望をお伺いする時、鏡を見ていただきながらお話ししておりますが、たいていの方は両方の手指で耳前部の皮膚を後上方に引き上げながら、「このようになると理想的です…」と答えられます。
しかし、東洋人は皮膚・皮下組織が厚くて重い上、骨格的にもほほ骨、エラが張り出していることが多いため、フェイスリフトの効果が出にくいことが多いのです。この“患者さまの思い描く理想”を実現するための有効な手術法について顔面の解剖学的特長を絡めご説明しましょう。
ほほの部分の老化は、さまざまな要素が複合されて起こります。皮下脂肪が減少することで「皮膚のタルミ」につながり、筋肉の付着部が弱ることで「筋肉の下垂」がおこります。そして、「ほほ骨の上の脂肪(Malar fat)が下垂する」などの要素が合わさって、その結果、ほうれい線と呼ばれる鼻唇溝が深くなり、口角がタルミ、下顎にもタルミが生じてきます。このようなほほ全体のタルミを解消するのがフェイスリフトです。
ドクターが、安全に手術を行うために解剖を熟知していることは非常に重要です。さらにフェイスリフトにおいて、より効果的で持続性のある手術を行うためには
1)顔面神経
2)SMAS(表在性筋膜)
3)靭帯(Retaining ligament)
以上3点の解剖学の知識が非常に重要です。
フェイスリフト手術において高度な手技が不可欠は、顔面神経の走行のもとで手術を行なうからです。
顔面神経はSMASの下を走っていますので、SMASを剥離して引き上げる際には、より詳細な解剖まで熟知しておかなければ、安全に手術を行なうことはできません。従って顔面神経の扱いに精通したドクターに任せる必要があります
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SMASと称される顔面の表在性筋膜の解剖学的構造の理解も重要です。SMASとはSuperficial musculoaponeurotic systemの略で、筋肉の両端は、関節をまたいで骨と骨をつないでいますが、表情筋といわれる顔の筋肉は、骨ではなく皮膚につながっています。この皮膚を支えている線維状の組織(表在性筋膜)がSMASです。
フェイスリフト手術の目的は加齢によって出来る、たるんで下がってしまった皮膚や皮下軟部組織を整復することにあります。 フェイスリフト術式の変遷はSMASの解剖学的研究とともに進展しました。
ほほ部のSMASの解剖で重要なのは、SMASはほほ部中央で大ほほ骨筋と強く結合していることで、この部位で浅層・深層に分かれ、大ほほ骨筋を取り囲んでいます。すなわち、SMASを単に外側方向に引っ張ることは、大ほほ骨筋を外側に引っ張ることになり、結果、ほうれい線のしわを深めてしまいます。
したがってSMASの完全な可動性を得るためには、ほほ骨に付着している大ほほ骨筋からSMASを完全に剥離する必要があります。つまり、SMASを単に外側に引っ張るのではなく、SMASを靭帯、大ほほ骨筋から切り離すことにより、完全な可動性が得られ十分な引き上げ効果がでるのです。
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顔面の靭帯(retaining ligament)とは、重力に反して皮膚を支えている柱のような組織で、SMASとともにフェイスリフト手術を行なううえで重要な解剖学的なポイントとなります。
靭帯については1959年以来、さまざまな研究が行われています。
靭帯は、非常に硬くて頑丈で、顔面の皮膚(真皮)と骨格、深筋膜層とを連結しています。老化により靭帯が緩むと、ほほ脂肪体(malar fat pad)が内側下方へ下垂し、その結果鼻唇溝の深さが目立つようになります。また、ほほ部全体の脂肪は、フェイスラインまで下垂し、"jowl変形(顎の肉の下垂)"といわれる四角い輪郭になります。靭帯は真皮組織と強固に結びついていますので、フェイスリフト手術の際に引き上げを困難にする要因となります。つまり、皮膚や軟部組織の可動性を得て、十分に引き上げるためには、靭帯を切り離す必要があるということです。当院では、靭帯は皮下の層で切り離し、引き上げの際に縫合固定組織として再利用します。
従来より行われてきたSMAS法と呼ばれる方法は、耳前部からアプローチしてタルミを引き上げるのですが、東洋人はほほ骨、エラが張り出していることが多く、また皮膚・皮下組織が厚くて重い特長もあり、耳前部だけで引き上げ効果を出すことが難しいのが現状でした。
そこでリッツ美容外科では皮膚とSMAS(表在性筋膜)を同時に引き上げ、靭帯を皮下の層で切り離し、引き上げの際に縫合固定組織として再利用するフェイスリフト手術を行ないます。この方法は、傷が早期から目立たず従来の方法とは比較にならない効果をもたらし、効果の持続性についても同様です。手技は多少煩雑ではありますが、その安全性、効果を考えた場合には大変すぐれた術式です。